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2012年8月30日 (木)

CIRCUS MAXIMUS/Nine

CIRCUS MAXIMUS「Nine」です。今回も無駄に長いです(^^;
お時間ありましたら、お付き合いください(^^;

Circusmximus_3_2

ノルウェーのメロディックプログレメタルバンドの
12年発表の5年振り、3枚目のアルバム。

5年は長かった…。でも、待った甲斐のある充実作です。
新境地を開拓せんとする、野心的な試みも随所で見られます。
そこをどう感じるかで評価が分かれるアルバムかもしれません。

希望が湧き上がるメロディと、快活で印象的なピアノリフが乱舞し、
GとKeyのユニゾンソロが興奮を呼ぶ#6゛I Am゛、
心暖まる、切なくて感動的なメロディと、
ドラマティックな展開が泣ける、
アルバムを締め括る10分の大曲#10゛Last Goodbye゛
という名曲が得られた時点で大満足な作品です。

゛I Am゛の心踊る躍動感溢れるメロディは
前作の゛Arrival゛が好きならきっと気に入るのではないでしょうか。
プログレ要素は減じられ、より歌モノ志向の強い仕上がりですが、
このポジティブな世界観は通じるものがあると思います。

マイケル・エリクセンの伸びやかなハイトーンがもたらす
溌剌としたPOPな魅力は今回も健在、
特にこの曲のような超キャッチーな曲では
その能力を存分に発揮しています。

そして、アルバムのラストを飾る10分の長尺曲゛LastGoodaye゛。
たまりません。息をつかせぬ展開で興奮を誘う大曲というより、
哀しいストーリーを優しい音楽で紡ぐ長編ドラマ、という趣です。
過去作も含め、彼らの曲のなかで一番好きかも。

愛する人との死別の瞬間、息を引き取るその瞬間を
描いたとみられる歌詞と相まって、
切なく美しく、そして優しいメロディと、ドラマティックな展開に、
感涙を禁じ得ません。
音楽を聴いて涙が浮かんだなんていつ以来だろう…。
エリクセンのやさしい歌唱に癒されます。

他にも素晴らしい曲が満載です。

#5Reach Whthinは、G&Bの重低音リフに絡む、
Key&クリーントーンGのディレイ処理されたアルペジオとの、
重層的な響きが抜群にクールなミディアムテンポの曲。
哀愁を帯びた超キャッチーな歌メロが非常に素晴らしい。

#1Forging~#2゛ArchitectOfFortune゛の存在感が凄いです。
かつてないほどのメランコリシティ、ヘヴィな音像、
中盤の70年代プログレを思わせるアコースティックな叙情性…
といった新機軸と、
アルバム冒頭に11分半にも及ぶ大曲を配置する
野心的な試みがシビレます。エリクセンの中音域を駆使した
セクシーな歌唱が楽曲の持つメランコリシティを
増幅しているのも見逃せません。聴くほどに染みます♪

#3Namasteのオリエンタルでグルーヴィーなリフと、
展開部における、闇空から射す一筋の光を思わせる、
心癒されるメロディとの対比が、聴くほどに癖になります。
これほどまでにグルーヴィーなリフは
過去作にはみられなかったと思います。

#8The Oneは、メロディの即効性こそ高くはないものの、
聴くほどに味わいが増します。
ブリッジパートの歌メロ、ヘヴィなGリフ、
中盤におけるkeyとdrの疾走感溢れる
コンビネーションプレイが特に、
静かな興奮を生む中毒性を有しています♪
こういうタイプの曲も新機軸だと思います。

#4Game Of Lifeも聴くほどに味わいが増す曲です。
keyのピアノサウンドによるメロディアスなリフ、
GとBによるボトムの効いたリフが印象的。
そして何よりも、マッツ・ハウゲンのGソロが素晴らしい!
美しい音の連なり、天駆けるようなフレージングには、
ただただ、ため息が出ます♪

#7Usedはライヴを意識したと思われる、
スピーディーでノリを重視したような印象の曲です。
それでいて、中盤ではレイドバックしたムードになり、
さらにリズムGのオーバーダビングなしで
リズム隊のみのサウンドで繰り広げるGソロはライヴさながら。
来日してくれ~!

アルバムの随所で新たな試みがみられるなかで、
過去2作の音楽性を一番素直に継承しているのは
9分弱の大作#9 Burn After Reading かもしれません。
所謂、Images&Words期のDREAM THEATER的な
メロディックなプログレメタルです。
長さを感じさせないスリリングな構成が興奮を呼びます♪

ちなみに、ブックレットの各曲の歌詞の後に、
グラフィカルに描かれたQRコードですが、実際に読み取ると、
各曲の歌詞ページ、及び、直筆の楽譜が表示されます。
お試しあれ♪楽しい試みですね♪
アートワークはマッツの奥さんでデザイナーの
アンヤさんの手によるもの。

さてここで、アルバム全体を見渡してみたいと思います。

彼らの音楽の特徴は

1.Image&Words期のDREAM THEATERの音にフォーカスした
 プログレメタル
2.TNTに通じる、透明感溢れる「歌モノ」メロディ

で、とりわけ、2が放つ強力な魅力が、
凡百のDREAM THEATERフォロワーとの差別化に
大きく寄与していました。

そこで、この作品の音楽性ですが、
先述した2のメロディに変質が見られます。

#5#6などは、聴いた瞬間、口ずさめる、彼らならではの、
超キャッチーな「歌モノ」志向を強力に引き継いでいる一方、
多くの曲は、依然メロディアスではあるものの、
即効性はさほど高くはなく、
むしろ聴くほどに味わいが増す
゛スルメ゛的なメロディのもので占められている印象です。
その意味では、SEVENTH WONDERが有する
メロディの性質に近付いた印象です。

一方、先述の1に関しては、
以前よりもプログレ志向と楽器陣の自己主張が
増強されたように感じます。
特にリフにおけるGの主張がより前面に出てきたように思います。

なかでも、アルバム前半の#3~#5のリフにおける
ボトムの利いたGサウンドは楽曲にこれまでにない
ヘヴィな質感をあたえています。

また、メロディの語り部の役割が、
voよりも楽器陣にウェイトが置かれた印象の曲が
増えたようにも思います。

先述した゛GameOfLife゛での煌めくようなGソロ
゛TheOne゛でのkeyとdrのコンビネーションプレイは
楽曲の強烈なハイライトになっています。

つまり、過去2作と比較すると、
エリクセンのvoによる歌メロのフィーチュア度が相対的に下がり、
ハウゲン兄弟を中心とした楽器陣の役割が増強された印象です。

これは、過去2作のプロデュースがバンドだったのに対し、
今作がハウゲン兄弟主導によるものに変わった点と
無関係ではないでしょう。

メンバーの健康上の理由でレコーディングが中断したり、
エリクセンがKAMELOTのロイ・カーン離脱に伴う
ツアーヘルプに参加したり、
THE MAGNIFICENTプロジェクトを立ち上げたりと、
バンド全員が揃ってのインプットを行う時間が
物理的に減少しであろう事も予想されます。

これにより、メインソングライターである
ハウゲン兄弟のインプットが相対的に増加、
プロデュースも結果的に2人が担う事になったのではないでしょうか。

そして、前作から5年という月日が与えた、膨大な時間です。
楽曲は相当な時間をかけて練り上げられたものと予想されます。
おそらく、その作業の力点は、歌モノとしてのメロディの追求
というソングライターとしての立場よりも、
プレイヤーの立場としての、プログレ色の追求に
置かれる事となったのではないでしょうか。

これは歌メロをないがしろにしたという意味ではありません。
力点の置き方についての比較としての話です。
また、メロディの質が下がったという意味でもありません。
メロディの性格が「変わった」という事です。
ここに至るまでにたっぷりと語ってきた通り、
依然、魅力たっぷりのメロディに溢れています。

3作目という事と、5年のブランクから、
単なるこれまでの作品の音楽性の踏襲ではなく、
作品に深みを与え、芸術性の向上を図る事を
ねらったものと想像されます。

そして、その目論見がねらい通り達成された、
芸術性の高い仕上がりとなっており、
彼らの高い実力には、ただただ、感心するばかりです。

ただ、気掛かりな点があります。

アートの観点では、今回の数々の試みは高次元で成功、
完成度の高い作品として結実していると思います。

しかし、他バンドとの差別化という、マーケティング的な側面から、
この作品、バンドをみた時、前作までと比較すると、
差別化ポイント・ポジショニングがぼやけてしまったと感じます。

先述の通り、メロディの性質が変質、即効性の高いもの中心から、
即効性は高くないものの、聴く程に味わいが増すタイプのものが
中心となりました。これはSEVENTH WONDERへの接近と感じます。

また、これも先述しましたが、プログレ志向が強化、楽器陣の主張と、
楽器陣のメロディの語り部の役割も増強されました。
これは私としてはDREAM THEATERへの接近と感じます。

即効性の高い強力な「歌モノ」メロディと、
それをさらに魅力的に伝えるエリクセンの伸びやかでセクシーなvoにこそ、
このバンドが「他では代わりがきかない」差別化ポイントがありました。

しかし、その点が今回、ぼやけてしまい、数多ある、
しかも日本ではあまりセールスが伸びない
「DREAM THEATERフォロワー群」に埋没する危険性が
出てきたように思います。

私は、この作品はアートの側面からみると、
非常に優れた作品だと断言出来ます。
しかし、顧客に限られた原資のなかから、対価を求めて販売する
「商品」でもある以上、アートだけでは必ずしも、
財布の紐はゆるまないと思います。

こういう音楽ならわざわざCIRCUS MAXIMUSに出費しなくても
DREAM THEATERだけ買っていれば充分だ、
と顧客に感じさせてしまったら、おしまいです。

音楽で最も大事なのは芸術性であるのはいうまでもありません。
しかし、それだけでは駄目だと思います。
他では代わりがきかないから、お金を払ってでも手に入れたい、
と思わせる、差別化ポイント、すなわちオリジナリティ・商品価値が必要です。
ダウンロード全盛の現代であれば、なおさらです。

差別化という点で、彼らを擁護するなら、
エリクセンのメロディックロックプロジェクト
THE MAGNIFICENTとの差別化を、もしかしたら、意識したのかな、
と思わないではありません。

もし仮に、本当にそれが事実だったとしたら、意識を改めてもらいたいです。
本業に悪影響を与えるサイドプロジェクトは悪です。
本業が確固としてこそのサイドプロジェクトです。
本末転倒といわねばなりません。

私はこの作品の完成度には諸手をあげて満足だという事が出来ます。
しかし、このバンドを愛するが故、
私のような一部のマニアのみに満足されるようなバンドで
終わって欲しくないのです。
広く認知を集め、プロとして、作品の完成度に見合う
収益をあげて末永く活躍して欲しいのです。

次作では、今作の芸術性を保持しつつも、
CIRCUS MAXIMUSを差別化せしめている、
即効性の高いメロディとマイケル・エリクセンのvoの魅力でもって、
世界を振り向かせて欲しいのです。

彼らなら、きっと出来るはず!

…あ、今度は5年も待たせないでね(^^;

関連記事:
CIRCUS MAXIMUS:Isolate
CIRCUS MAXIMUS/The 1st Chapter
THE MAGNIFICENT/THE MAGNIFICENT
CIRCUS MAXIMUS、その周辺。

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