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2011年5月 5日 (木)

CYNIC/Traced In Air

当Blogは音楽カテゴリーを Melodic Rock と Aggresive の2つに分けています。

滅多に更新しない当Blogですが、とりわけ更新頻度の低い

Aggressive カテの実に5年振りの更新となる記事を書きたいと思います。

CINIC/Traced In Air です。

Cynictracedinair

プログレッシヴな感性をデスメタルに導入した始祖であり
90年前後にフロリダで実験精神を体現、
その後のメタルシーンに大きな影響を及ぼし続けている伝説的な存在、
それがDEATH、ATHIEST、そしてこのCYNICです。

その豊富な音楽的素養と手腕により数多のバンドに渇望され、
様々なセッション、ツアー活動を重ねたメンバーが作り上げた傑作
「Focus」を93年に発表するも、その後解散。
他に類を見ない音楽性と、たった1枚で終わった希少性も相俟って、
その孤高の存在感から、永年にわたって語り継がれていくことに。

そして解散から13年の時を経てついに再結成、いくつかのLIVE活動を経て
15年振りの2作目として08年に発表したのがこの「Traced In Air」です。

ひとくちにプログレッシヴなデスメタルといっても、
その精神性を発揮する方法論は様々で、
先述の始祖的3バンドについても例外ではありません。

DEATH(特に後期)は楽曲構成の複雑さや展開美、
そして時に導入されるトラッド・メタル的なメロディとのコンビネーションで、
ATHEISTはKING CRIMSON等が体現していた、
JAZZ的・数学的な発想に基づいた変則的リズムと、異空間的な音の連なりで、
その音世界を表現していたのに対し、
CYNICはフュージョン的な音世界とDEATH的な展開美をベースにしつつ、
そこに近未来SF的感性と宇宙的宗教観、神秘性を大幅に導入していた点に
その特異性があったと思います。

そして15年の時を経てついに姿を現したこの2作目は、
彼らが持つ、その神秘性と宇宙的宗教観にさらに「Focus」し、
独特の幽玄世界・音宇宙を構築した、怪作に仕上がっています。

ディストーションギターやデスボイスといった
デスメタル的要素は一定レベルで残されているものの、
その構成比はかなり減じられ、フュージョン的要素がかなり多くなっています。

ギタ-サウンドはクリーントーンに空間系エフェクトを施したものが
かなりの構成比で占めており、
水晶のような煌きと、その陰に潜む妖しい輝き
…そんなイメージを抱かせる音作りがなされています。

また、ヴォーカルアプローチも大幅に変化しています。
前作で特徴的だった、デスヴォイス&ヴォコーダーアジテーションの
コンビネーションに代わって採り入れられたのが、
ノーマルヴォイスに1オクターブ上のファルセットヴォーカルを重ねた
ダブルヴォーカル※に、歪み系エフェクトを施したとみられるアプローチ。
そしてそのヴォーカルで奏でられる「メロディ」の大幅導入です。

 ※ダブルヴォーカルについては、オクターバ等の
  エフェクターによる擬似ダブルヴォーカル効果かもしれません

このヴォーカルアプローチがまた、モダンジャズ~フュージョンでみられる
スキャットを彷彿とさせるためか、
ことさらにフュージョン的な印象を強めているように感じました。

そしてこの特異なヴォーカルにグロウルを絡め、
一筋縄ではいかないテクニカルなリフとドラミングによる躍動が注入され、
その底流をミスティックな響きを伴ったベースサウンドを奏でる
チャップマンスティックのプレイがミックスされることで
CYNICのCYNICたる意匠が施されることとなり、
ややもするとイージーリスニングミュージック化しかねない楽曲を
複雑かつ奇異に展開していきます。

そしてこれらが混然一体となって、聴き手の身体に浸透していき、
海底から見た海面の波のゆらぎのような、
浮遊感をともなった音宇宙に誘っていくのです。
深く、深く、落ちて行く…。


空から、Robertvenosa3
私は波と粒子の中へと生まれた

創造されていない光の中に、
神託が生まれた

内なる宇宙を震わせよ
原初の状態の勧告
未知の客に対して

私は全体であり、開かれている
私は飢えており、壊れている
私は失われ、見つかった

私は進歩的な眠り手

脚から尻へ
臍から胸へ
喉から脳へ
そして肌が整えられる

今や私たちは一つの塊

私の大いなる動脈からRobertvenosa4

すべての草の葉へ
普遍の道

存在

原初のエネルギー
そこに創造が生まれた

私の腕を掲げよ
宇宙よ、私の目を開け
宇宙よ、私の心を讃えよ

…以上は、ブックレットに収められた、
Robert Venosa によるアートワークの一部と、
各楽曲の詩の抜粋です。
(アートワークはクリックすると拡大して見れます・一部ブラウザは不可)

これらアートワークと詩世界に触れながら、
各楽曲の音の響きに没頭する事で、イマジネーションが立体化され、
作品の持つ精神世界の更なる深みへと耽溺する事が出来ます。
静寂と闇が広がる深夜の鑑賞をお薦めします。

さて、この奇異な幽玄音楽を人に説明する時、
既存のカテゴリーを用いて語る場合、何と呼べばいいのでしょうか。

このバンドの位置するテリトリーはもちろんデスメタルではあるのですが、
前作にあったアグレッションを求める向きには、少なからずショックを
与えるものであると予想されます。

しかしながら、前作の時点で、その先進的感性は既に大いに現出されており、
その姿勢は今作においても、いささかのブレもなく発揮されています。
そこに惹かれていたファンなら、
この作品を好意的に受け入れる事が出来るものと思います。

音楽の持つ可能性に果敢に挑戦していく、その開拓精神の発露たる
各楽曲の煌きこそが、このアルバムの聴き所だと思います。

プログレッシヴな感性とテクニカルなプレイを標榜する音楽を好む方には、
是非一度、オリジネイターが現代に再降臨して生み出した、
その音に触れてみていただきたいと思います。
きっと、何かを感じていただけるものと思います。

関連記事:
CYNIC/Focus

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