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2011年2月19日 (土)

LAST AUTUMN'S DREAM

北欧の天才哀愁メロディシンガーソングライターで、とりわけ1stの高い完成度で

もって、日本のメロディアスハードファンに圧倒的支持を得た

ミカエル・アーランドソンと、

代表曲「Burning Heart」「Long Gone」等で感動的なGソロを披露、

日本で絶大な人気を博したFAIR WARNINGのGの一人、

アンディ・マレツェクの出会いから生まれた「LAST AUTUMN'S DREAM」。

Lad_member

最新作「Yes」のレヴューでも触れましたが、
私が考える、彼らの魅力は下記です。

1)ミカエルが創り出す、北欧の冷涼な空気を感じる哀愁Tune
2)ミカエルが創り出す、ベルベットのようなあたたかみを感じる癒しTune
3)アンディの紡ぐ歌心あふれる煽情Gソロワーク

4)ジェイミー作のライトでPOPな爽やかTune

とりわけ1)と2)の落差が生み出す、
切なくもあたたかい、ほのかな幸せ感が格別で、
極上のカタルシスが得られます。

まるで、冬の日の、あったかい毛布にくるまる瞬間のような…。

そしてそのカタルシスをさらなる高みに連れて行ってくれるのが
アンディのGソロワークで、特に1)のタイプの曲との相性は抜群です。
とにかくその歌いまくるプレイとサウンドメイキングが秀逸で、
曲の魅力をさらなる高みへと昇華してくれます。

そしてジェイミーには悪いのですが、これらを引き立てるのが
4)ジェイミー作の曲だと考えています。
ミカエルの曲を「影」とするなら、ジェイミーの曲は「明」の位置づけであり、
両者のバランスよい曲数構成比、アルバム内の配置で陰影とコントラストが
くっきりとし、立体的なアルバムを形成していたと感じています。

今日は、この評価軸に沿って、各アルバムを振り返ってみたいと思います。

Lad_1st
LAST AUTUMN'S DREAM/2003

ミカエルとアンディによるバンド始動、というニュースに、膨らみっぱなしの私の
期待に見事に応えてくれた、屈指の名曲"Again And Again"で幕を開ける
このアルバムで私の心は完全に彼らに持っていかれました。
ミカエルならではの先述の1)の魅力が凝縮された素晴らしい曲です。
また、このアルバムのみの参加となった、EUROPEのミック・ミカエリのKeyが
素晴らしい仕事をしていることも特筆すべきでしょう。
ミカエルの冷涼な哀愁を増幅する透明感溢れるプレイが見事で、
悶絶モノのイントロ、バッキング、ソロ(←これが特に素晴らしい!)
を披露しています。

そしてこの曲と双璧をなす名曲が"Going Home"です。
哀愁の域を超え、号泣、と称してよい、悲しみに満ちたメロディが、
バンド名から想起される晩秋の風景のイメージにぴたりとハマリ、
切ない気持ちを抑えきれません。そして先述の3)のアンディのプレイです。
屈指の名演です。2ndコーラス終了後からの、タメを効かせたビブラート、
むせび泣くチョーキング、感情の昂ぶりを迸らせるほどよい早弾き、
その全てが完璧な構成です。

また、このアルバムは彼らの全タイトル中、アンディが最も関与したアルバム
という事が出来ると思います。
とりわけ"Break The Chains"でのギターオーケストレイションは
目を見張るものがあり、これを全アルバムで発揮してくれればいいのに…
と思うことしきり、です。また「High Up」では作曲でも関与しています。

 ※なお、アンディの作曲への関与はこの曲と
  次作収録の"This Gotta Be Love"の2曲しかありません。
  また、その後3rd以降のアルバムでは、
  ソロ以外はB.のマルセルや他のプレイヤーが、
  リズムギターを担当していくことになっていきます。

この他、次作で加入することとなるCRYSTAL BLUEのKeyトーマス・ラッサールが
提供している"Guardian Angel"もミカエルの曲に呼応したような、
哀しみを感じる曲調でアルバムに良い流れをもたらしています。

ただ、このアルバムはプロジェクト的な側面がとりわけ大きいアルバムで、
そこに歯痒さも感じました。

今作のアンディのGのプロデュースを手掛けたリック・ブライトマン作の曲が5曲、
(うち1曲は先述の"High Up"でのアンディとの共作)
先述のトーマス・ラッサールの1曲と、アルバム全11曲中6曲が外部ライター曲で、
さらにそこにミカエルのソロ時代のセルフカバー"The 1"、
アンディが在籍したFAIR WARNINGのセルフカバー"Pictures Of Love"の2曲
の存在もあり、純然たるメンバーによる新曲が多くない点があります。

よって、屈指の名曲を収録しつつも完全には満足できないことによって、
「彼らならもっと出来るはず…!」という次作への渇望感を煽る事となり、
結果、彼らへの期待感が、今作リリース前より、
かえって増幅させられることとなったのでした。

Lad_ii
II/2004

前作で参加していたKeyミック・ミカエリ、B.ジョン・レヴィン、Dr.イアン・ホーグランドの
3人がEUROPE再結成のため離脱、そこにTALISMANのリズム隊の
B.マルセル・ヤコブ(Ex.YNGWIE MALMSTEEN)、Dr.ジェイミー・ボーガー(Ex.TREAT)
の二人と、前作でソングライティングに関与したKey.トーマス・ラッサールが加入して
制作されたのが、この2作目です。

日本のレーベルのリクエストにより、前作同様の晩秋のリリースが決定済でかつ
メンバーの大幅刷新が災いしてか、今作の制作には充分な時間がかけられず、
結果、個人的には彼らの作品中、最も印象に残らない作品となりました。

"日本人は速い曲が好きだから"ということで収録された"Fire With Fire"という
日本版ボーナストラックで1曲目が始まるという構成も正直イタイものがあり、
さらには彼らの音楽性にはフィットしないポップス畑の人選による
プロダクションにより、せっかくのTALISMAN組のグルーブ感あふれるプレイが
埋没する結果となり、また前作同様、リック・ブライトマン作の曲が5曲で
FAIR WARNINGのセルフカバー1曲、ミカエルのソロのセルフカバー1曲という、
純然たるメンバー曲が少ないという
課題もそのままで、そのちぐはぐ感から残念な結果に。

ただ、ハードポップ/メロディアスハードの1作品としては決して低品質な
アルバムではなく、これは彼らに私が期待するものとの
ギャップについての意見です。

小粋なPOP曲"Up In Paradise"
これぞミカエル!!!というべきせつなくもあたたかいバラード
"So Much  Love In The World"泣きまくるバラード"Brand New Life"
ミカエルのソロ時代の曲で、切なさ満載の"A Place To Hide In Town"等、
良質の楽曲も数多く収録されています。

とはいえ、前作収録の"Again And Again""Going Home"のような
超名曲は見当たらず、
結果、前作以上に「彼らならもっとやれるはず…!」という思いが
増幅されることになったのでした。

Lastautmnswinter
Winter In Paradise/2005

名曲を収録しつつも何か足りない1st、練り込み不足の2ndによって
「彼らならもっと出来るはず…!」という思いを作を追うごとに強めるに至り、
"3度目の正直"を期して待望した3rdアルバム。

そうして登場した彼らの新作は、
LAST AUTUMN'S DREAMという詩的なバンド名、
メンバーのバックグランドにある音楽性の融合体として
期待されるものにふさわしい、あるべき姿を、
理想的な形で提示してくれたアルバムに仕上がっていました。

すなわち、先述の
1)ミカエルならではの北欧の冷涼な空気を運んでくる哀愁Tune
 →"Love To Go""Winter In Paradise""If You Are The One"

2)ミカエルならではのベルベットのようなぬくもりを感じさせる癒しTune
 →"The Way You Smile""I Don't Want To Hurt You"

を主軸にしつつ、
4)前作から加入のジェイミーによるライトでPOPな爽やかTune
 →"Don't Let Our Love Go Down"

そして全編で曲にフィットしたソロを聴かせてくれる
3)アンディの歌うような扇情的なソロワーク
 →"Love To Go"のラストコーラス部~エンディングのソロ一閃、
  "The Way You Smile"の澄みわたる冬空のようなソロ、
  "It's Alright"での燃え上がるようなソロ、
  "I Don't Want To Hurt You"のささやくようなソロ
  "All I Want Is Rock N' Roll"でのスリーズィーなソロ
  "If You Are The One"での哀しみを湛えるハーモニーソロ…。

その全てが、LAST AUTUMN'S DREAMに私が求めていたものが、
完璧な形で、アルバムに封入されていたのです。

つまり、私が列挙した彼らの魅力4項目とは、彼らがこのアルバムで確立した、
「LAST AUTUMN'S DREAMの音楽性」というべきもので、
以後、私の彼らのアルバムの評価軸は、この音楽性をいかに体現しているか、
という点に集約されていくこととなったのでした。

 より細かいレビューはコチラ→Winter In Paradise

Lastautumnsdream_saturn
Saturn Skyline/2006

前作で自らの音楽性を高次元で確立し、バンドとしてのケミストリーを実感した
彼らが次に推し進めたのは、バンドとしての一体感の更なる強化と、
その音楽性の魅力のさらなる研磨でした。

バンドの一体感が如実に表れたのが"Pages"です。
過去最高のハードな楽曲で、アンディの入魂のソロワークとミカエルの熱い歌唱、
マルセルとジェイミーのハードでグルーヴィなリズム、メンバ一丸となったユニゾン、
と聴かせどころが満載です。

この他にもLIVE映えしそうな楽曲が各種取り揃えられています。
"After Tomorrows Gone""American Girl""Rock N' Roll Is Saving My Soul"
などがそうで、実際07年の来日の際に"After~""Rock~"の2曲はPlayされました。
とりわけ後者は、声を枯らしてミカエルとの掛け合いに参加した想い出の曲です。

音楽性の研磨、について触れますと、先述の4項目
1)ミカエルの冷涼な哀愁Tune
 →"Domino""Frozen Heart"

2)ミカエルのベルベットのようなぬくもりを感じる癒しTune
 →"Supersonic"

3)アンディの扇情的ソロワーク
 →"Pages"の情熱的なハードなソロ
   "Frozen Heart"のタメを利かせたソロ・寂寥感を募らせるアウトロソロ
   "American Girl"での曲のPOPな感触を増幅させるソロ・アウトロソロ
   "Rock N' Roll Is Saving My Soul"での切なくもあたたかいソロ

4)ジェイミーのPOP Tune
 →"After Tomorrow's Gone"

といった楽曲が、前作の個々の楽曲以上に強力な輝きを放っており、
バンドの充実振りを強烈に印象つけてくれます。
過去3作でみられた、セルフカバーや外部ライター曲が、
今作では一切無いところにも、それが表れています。

ただ、1)~4)の特徴に列挙できる曲が前作と比較すると多くは無いという点で、
アルバムの完成度では前作に譲る、という印象です。

とはいえ、バンドの充実振りから機は熟した、と判断してか、
このアルバムの発表から9ヶ月を経て、バンド初の来日公演が実現、
多少課題は残しつつも、私達ファンの溜飲を下げる
素晴らしいパフォーマンスを披露してくれたのでした。

 より詳細なレヴューはコチラ→Saturn Skyline
 初来日公演レポートはコチラ
   →祝!LAST AUTUMN'S DREAM 来日公演!!!(↑記事遅過ぎ)

Huntingshadows_lad
Hunting Shadows/2007

前作で提示されたバンドの一体感、
それをパフォーマンスでもって体現した来日公演、
これらを経て発表された今作は、
そのバンドの一体感とLIVE感を大幅に導入した作風で、
とりわけマルセルとジェイミーのグルーブ感が
ダイレクトに伝わってくるサウンドが大きな特徴といえます。
アルバムのオープニング"Strange Operation"からマルセルの特徴的な
グルーヴィなベースサウンドがフィーチュアされています。

また、作曲面でもジェイミーの曲が今作では3作に増加、
その存在感を強めています。

さらに、ジェイミーのLightなPOP感覚にミカエルが影響を受け、
それが顕在化したのが前作の"American Girl"だったと思うのですが、
今作でもそういった面が発揮されたのが
"Rainbow Sky""Overnight Sensation"で、
希望が沸いてくるようなポジティブな気持ちにさせてくれます。

先述のLIVE感の導入と連動して採り入れられたと思われるのが、
後期RAINBOW的なアプローチで、特にミカエルの声質も相俟って、
ジョー・リン・ターナー的なニュアンスが強く感じられます。
特にアルバム中盤の"R U Ready To Rock N' Roll"
"Every Beat Of My Heart""Serenity"等にそれが顕著で、
北欧メロディアスハードというよりは、
よりオーセンティックなハードロック色が色濃く投影されており、
LIVEでのストレートなノリを重視した事が伺えます。

以上のような点で、これまでの彼らの作品とは趣を異にする
意欲作という事がいえますが、それは裏を返せば、
これまでの彼らの魅力のバランスの変調をも意味することとなり、
私のような、保守的な(^^; ファンからすると
少々物足りないものでもあります。

先述の4項目に沿ってこのアルバムを見渡してみますと
1)ミカエルの冷涼な哀愁Tune
 →"Lost In Moscow"

2)ミカエルのベルベットのようなぬくもりを感じる癒しTune
 →なし

3)アンディの扇情的ソロワーク
 →"I'm Not Supposed To Love You Anymore"の
   ブルーズテイストも織り交ぜたメロディックなソロと
   余韻を味わい深く演出するアウトロソロ
   (彼はアウトロソロも聴き逃せないものが多い)、
     "Serenity"のリッチー・ブラックモア的なシングルコイル風のサウンドとソロ、
  "Save Our Love""Rainbow Sky""Overnight Sensation"での
  音の連なりの美しさに耳を奪われるメロディックなソロ・アウトロソロ

4)ジェイミーのPOP Tune
 "Save Our Love"

…と、アンディのギターワークが冴え渡る3)以外に該当する曲が
極めて少ない点が物足りなく感じられます。

また、先述の後期RAINBOW的な曲について、
アレンジのアプローチには不満はないのですが、
正直、メロディの魅力が弱いと感じられる部分があり、
中途半端な仕上がりという印象を受けました。

以上のような点で、バンドとしての勢いを注入しつつも、
個人的には、あまり印象に残らないアルバムとなりました。

この後、彼らはドイツでのLIVEの模様を収めた
LIVEアルバムを発表、一区切りをつけた格好となりました。

Dreamcatcher
Dreamcatcher/2008

彼らならではの音楽性を確立し、バンドとしてのケミストリーも得られ、
来日公演を果たし、その勢いを注入したアルバムも発表、
そしてLIVEアルバムをリリースして一旦、
一区切りついた彼らは次にどこに向かうのか。
その動向に注目していたのですが、
中心メンバーのミカエルとアンディに悲しい事件が起きました。

ミカエルは奥さんとの離婚に直面し、
アンディは前歯を何本も折るという事故に遭ってしまいました。

愛する女性との別れという、重いテーマと向き合う生活が影響してか、
前作で抑えられていた哀愁味が復活、
また、ミカエルの別離の経験を下敷きにしたであろう、
愛の意味への問いかけや、別れ、過ぎ去りし日々の回想、
といった内容の歌詞がいくつかの曲に載せられており、
ミカエルのある種のセラピーとして機能したアルバムである事が窺えます。

しかしながら、アルバムの音楽性は絶望の色が投影されたものなどではなく、
「Dreamcather」というアルバムタイトル通りの
ポジティブな雰囲気で彩られ、
そこに彼らならではの哀愁味が付与されており、
前作に物足りなさを感じていた私の心に、灯を燈してくれる作風となっています。

前述の4項目に沿ってこのアルバムを見渡してみますと、
1)ミカエルの冷涼な哀愁
 →"Silent Dream""Who Needs Love"

2)ミカエルのベルベットのようなぬくもりを感じる癒しTune
 →"When My Love Has Left Your Heart"

4)ジェイミーのPOP Tune
 →"Hold On To My Heart""Me & You"

…と、前作と比較すると彼らの魅力が復活してきた印象を受けました。

これら4項目には該当しませんが、
ダイナミックなHard Rock Tune"Alarm""Your Kind Of Lovin'"
ジェイミー的な作風のミカエル作のPOP Tune "Frozen Flower"
60年代POPソングのような雰囲気もあるジェイミー作の"The Last To Know"
といった優れた楽曲も収録、充実した内容となっています。

また、NEW ENGLANDのカバー"Hello Hello Hello"も収録、
彼らのオリジナル曲にすんなり溶け込む仕上がりとなっています。

彼ら初のイントロダクションでアルバムの幕が開ける構成も新規性があります。

しかし、です。
先述の通り、アンディが前歯を何本も折るトラブルに見舞われてしまいました。
結果、このアルバムでは5曲のギターソロがアンディではなく、
ゲストギタリストによってプレイされています。

何故?何故、彼ら(というかレーベル)は、
アンディがベストなコンディションでプレイ出来る
状態になってからレコーディングを開始、、
タイミング次第では次年に発売するという判断を下さなかったのでしょうか?

確かに、レコーディングスケジュールやレコード会社に大きな影響を与える
事故を起こしてしまったアンディの自己管理の甘さは、
プロとしては許されざるべきもので、責め苦を受けるに値するものだと思います。

3rd以降のアンディはソロイストとしての作品の関与となり、
曲作りへのクレジットも初期2枚以外は皆無、
リズムギターはマルセルが担当、という状態だったとはいえ、
しかし、アンディのギターは、ミカエルの歌唱・ソングライティングと並ぶ、
バンドの2枚看板のひとつであり、
ギターソロは、その音楽性において聖域だったと思います。

この扱いはLAST AUTUMN'S DREAM というブランドを冒涜するものであり、
ファンのブランドに対する信頼を損なうものだと思います。
(この点は別記事で改めて書いてみたいと思います)

ゲストギタリスト達は、良い仕事をしています。
とりわけ、青春ドラマのエンドロールに流れる音楽ような、
切なくも甘酸っぱいメロディが魅力の
"When My Love Has Left Your Heart"のアウトロソロは秀逸で、
だからこそ、アンディだったらどんなプレイをしたのか、気になります。

3)アンディの扇情的なソロ 
 →"Frozen Flower"のとりわけエンディングコーラス~アウトロへの
   ツインボーカルか?と思うほど歌いまくるソロ、
   "Silent Dream"での曲の哀愁を増幅するソロ、アウトロソロ
     "The Last To Know"のオールドプレイヤーのような懐かしさを感じるパートと
  早弾きパートの対比が効果的なソロ、アウトロソロ 

…といった優れたプレイが数多く収められているだけに、
今作でのアンディの扱いには大いに不満を覚えます。
不当な扱いで脱退したFAIR WARNIGでの悪夢がよぎります。

また、アルバム全体の曲間が非常に短く構成されているのが特徴的なのですが、
曲の持つ余韻を味わうことなく次の曲が始まるため、
曲の印象が曖昧なまま終わる事となり、結果、アルバム全体の印象を弱める
という罠に陥っています。
イントロダクションで幕を開ける構成と短い曲間で、
アルバムに勢いを与える意図があったと推察されますが逆効果となっています。

・・・などと文句ばかり言いましたが、
このアルバムへの印象は決して悪いものではありません。
もっと良くなるのに、もったいない、という初期2枚に感じた印象と同じ事を
再度繰り返している、という点が残念なのです。

次作こそは…!と期待を込めて、晩秋を待っていたある日、
彼らに最悪の悪夢が訪れました。

マルセル・ヤコブが自ら、その生涯を閉じてしまったのです…。

かつてB!誌のTALISMANでのインタビューで、自分は悪性のリウマチを患っており、
音楽を奏でる事ができなくなる日が訪れるのはそれほど遠い未来ではない、
という旨の発言をしていました。
しかし、それから多分10年弱の年数を経ており、杞憂かと思っていたのですが
それは、生涯を終えるという最悪の形で、現実のものとなったのでした…。

LAST AUTUMN'S DREAMは過去最悪の存続の危機を迎えることとなりました。

A_touch_of_heaven
A Touch Of Heaven/2009

マルセル・ヤコブを失ってしまった、LAST AUTUMRN'S DREAM。
バンド存続の危機に陥った彼らでしたが、
新たなベースプレイヤーとして、
ナリー・ポールソンを迎えた布陣でバンドを再構成、
新たなスタートを切ることとしました。

他人を褒めることが滅多に無かったマルセルが、絶賛していたのが
ナリー・ポールソンでした。まるで自分がいなくなったら彼を後任にしてくれ、
と言わんばかりに…。
マルセルとTALISMAN時代から長年のパートナーだった、
ジェイミーはそう語っています。
また、ナリーはTREATでもジェイミーとリズムパトナーを努めており、
その点からも最適な人選だったといえましょう。

さて、その作品ですが、絶望に覆われたものになることなく、
むしろその悲しみを振り切り、自らを元気付けるかのごとく、
明るくPOPな作風となっています。
また、CHEAP TRICKの"Surrender"のカバーに象徴されるように、
全体的にパワーPOP的な音楽性に傾倒しているのも特徴的です。

そして、このところ、11月ではなく12月発売が定着してきたことも
影響してか、晩秋というよりは、冬、それもクリスマス的な、
せつなくてあたたかい曲調が収録されているのも見逃せません。
カバー作"See My Baby Jive""Candle In The Dark"を筆頭に
"How Long"もそういった味わいを感じます。

そして個人的に最大のトピックとしてあげたいのが
キラーチューンの復活、です。
過去2作にも良い曲はありますが、
キラーチューンとまではいえないものだったと感じています。

しかし、今作にはそれが収録されている。
"Renegade""Jenny's Eye"の2曲です。
先述の彼らの魅力4項目でいうと、
1)ミカエルの冷涼な哀愁Tune に該当する曲です。

前者のディレイの利いた透明感あふれるピアノサウンドに載せられた
メロディが発散する、その冷涼な哀愁には久し振りにシビレました。
そしてアンディのギターです。
短くシンプルで、とりたててテクニカルでもないプレイなのですが、
ビンテージ感が醸し出されるギターサウンドとリバーブによる音作りのセンス、
そして飛翔するような上昇フレーズに、
悶絶し、喜びのあまり天を仰ぎ見てしまいました。

そして後者は1stの名曲"Going Home"を彷彿とさせる、久々の号泣っぷりです。
前曲までは悲しみの逆説ともいうべき、明るいPOPな曲で進めていたのに、
アルバムの最後の最後に、マルセル没の悲しみを爆発させたかのようです。
アンディのソロも強烈に泣いており、とりわけ、エンディングのフェイドアウト部の
消え入るようなソロが最高です。

この2曲の存在で、私的には多少の粗はチャラ!という気にさせられています。

前述の4項目に沿ってこのアルバムを見渡してみますと、
1)ミカエルの冷涼な哀愁Tune
 →"Renegade""Jenny's Eye"

2)ミカエルのベルベットのようなぬくもりを感じる癒しTune
 →なし

3)アンディの扇情的なソロ
 →"Renegade""Jenny's Eye"←これらは先述の通り
   "What's On Your Mind""Top Of The World"Come Rain Or Shine"
     "Last Mistake""How Long"での構築美溢れる、
  「歌モノ」音楽で登場するようなメロディックなソロ、
   "Candle In The Dark"での冬の青空を飛ぶ渡り鳥の羽ばたきのようなソロ、
  "Heartbraker""Rinnning On Like Water"での
  ダイナミックなRock Feelingあふれるソロ

 このアルバムでは前作での過ちを改善しようとしてか、
 アンディが初めて他メンバーと一緒にスタジオ入りしてソロを収録したのも
 特筆すべき事項です(次作でも同様の手法を採用)。

4)ジェイミーのPOP Tune
 →"Come Rain Or Shine""Last Mistake"

2)は該当なし、としましたが、ジェイミー作の"How Long"
カバー"Candle In  The Dark"がその役割を担っており、
とりわけ後者については、私は原曲を知らないので、
これがミカエル作の曲だったらよかったのに…
と残念な気持ちになるほどの素晴らしい曲です。

マルセルの超絶タッピングソロ・語りによるイントロダクションに導かれて
アルバムの幕を開けるジェイミー作の"Caught In Between"、
同じくジェイミー作の"Last Mistake"の2曲では、
マルセル、ジェイミーが所属するTALISMANの盟友、
ジェフ・スコット・ソートの名前もクッレジットされています。
マルセルの死を悼むかのように、アルバムに華を添えています。
カバー"Candle In The Dark"はジェイミーがかつて在籍した
SIX FEET UNDERの曲でもあり、
アルバム全体でのジェイミーの関与度がさらに高まっています。

ここ数作で顕著な、ミカエル作によるジェイミー的なPOP Tuneは
今作でも見受けられます。"Top Of The World""What's On Your Mind"
が、それです。

このように、この作品はTALISMANの盟友ジェイミーを中心にした、
マルセル没後の悲しみを振り切るための、
ややもすると"空元気"と言い換える事もできる、
陽性のセラピー的なアルバムだったといえると思います。

そしてジェイミー主導による、マルセル没後のセラピー的な側面は、
次作でさらにその展開を拡大することとなるのです。

Lastautumnsdream_yes
Yes/2010

作を追うごとに作品への関与度を高めてきたジェイミーですが、
今作ではついに、ミカエルよりも多くの曲を収録されるという逆転現象が生じました。

その作風はというと、ジェイミーならではのPOP Tuneは健在ですが、
それだけでなく、先述の4項目の
1)冷涼な哀愁Tune 2)癒しTune という
従来ミカエルが担っていたタイプの曲をも取り揃えてくる充実振り。

前者は"Still Standin' Where Ya Left Me"
後者は"Another Night"がその筆頭格で、
屈指の疾走POP Tune "To Be With You"と並んで、
アルバムのハイライトを形成するキラーチューンといえます。

アルバム全体の作風は陽性だった前作とは打って変わり、
マルセル没後の傷を癒やす、癒しの雰囲気に彩られていると感じます。
1)冷涼な哀愁Tuneが今作では少ない点も、その印象を強めています。
(今作もマルセルに捧げられています)

より詳細なレヴューはコチラ→Yes

以上、長々と彼らの全作品を眺めてきましたが、
結局のところ、私の最大のお気に入りであり、
彼らの個性を確立した、個人的に彼らの代表作と考えている
「Winter In Paradise」との比較論に終始しており、
バンド側からすれば、冒険を阻む迷惑で盲目的なファンなのかもしれません。

しかし、アイデンティティというのも大事な一面であると私は思いますし、
そこはバンド側も大事にして欲しいと、切に願うのです。

文句を言いながらも、どの作品でも様々な楽しみを提供してくれた
彼らが、現在の私のNo.1バンドです。
(LastFm.をみていただければ一目瞭然→コチラ

おそらくは来シーズンも、新たな作品を携えて、
私たちに素晴らしい音楽を届けてくれることでしょう。
その時を楽しみにしたいと思います。

そしてまた、来日公演を実現させて欲しいものです…!!!

関連記事:
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Saturn Strikes/LAST AUTUMN'S DREAM
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LAST AUTUMN'S DREAM 来日公演!!!
<続>LAST AUTUMN'S DREAM 来日公演!!!
      祝!LAST AUTUMN'S DREAM 来日公演!!!(↑記事遅過ぎ)

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