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2007年2月27日 (火)

Human Nature/HAREM SCAREM

Human_nature_hs_1

カナダのメロディアスハードの雄、HAREM SCAREMが06年末に発売した、
通産11作目の作品です。

日本人の琴線に触れまくりの哀愁のメロディ、構築美にあふれ、
予想外に展開していく楽曲、甘くなりすぎない、ハードな音像、上手いVo.、
コーラスワーク、テクニカルで歌心溢れるGプレイ…。
多くのメロディ派の心を捕えて離さず、Mr.BIGと並んで客が呼べる
LIVE ACTでした。しかし、作を追うごとに目まぐるしく変化していく音楽性に、
ファンが離れていったのか、前回の来日から4年が経ちました。

彼らの音楽を語るときに、欠かすことの出来ない作品があります。
93年に発表された日本デビュー作「MOOD SWINGS」です。
先に挙げた彼らの特徴が最も理想的な形で提示された、
HAREM SCAREMファンの「スタンダード」です。
しかし以後、多くのファンが必要以上に「MOOD~」の音を求めるようになりました。
これは、その後にリリースされた3作目「VOICE OF REASON」の、
時代に影響されたダークな音像と、ファンが待ち望んだ音像との激しい落差による、
いわばトラウマが原因で、そのせいでその傾向が強まった、
というのが私の意見です。

しかし、Harryはインタビューでよくこんな言葉を言います。
「僕達の音楽性はそんなに大きく変わっていない。違うのは、プロダクションなんだ」
なるほど、1作目は外部ライターの影響もあってか、Vocalアルバム的な要素が、
2作目は彼らが当時夢中だった北欧メタル(恐らく主にTNT)の影響が、
3作目はグランジの影響が、
5作目はパワーPOPの影響が色濃く投影されていました。

しかし彼らのLiveに行ったことのある方ならわかると思いますが、一見バラバラに
見える各アルバムの楽曲は、Liveでプレイされると意外にも違和感なく聴こえる
のです。バンド名を変えた「RUBBER」アルバムの曲にしても然り、です。
「プロダクション」を取り払ってプレイされる「生」の音は、実はそんなに目くじらを
立てるほど、大きく変わっていないことに気付かされます。
Harryの言葉が実感を伴って伝わってきます。

さて、前置きがかなり長くなりましたが、今回のアルバムです。
今回のアルバムを聴いて強く実感させられるのは、先述のHarryの言葉です。
復活作「Weight Of The World」以降の音というのは、デビューアルバムから
「Ultra Feel」までの、様々な影響を内包した音楽を、全て「Mood Swings」の
プロダクションで包み込んで再提示してみせた音なのだ、という事です。
一見バラバラに見える彼らの音の変遷を、プロダクションでもって一貫性を
持たせたのが、復活後の音だということです。

特に今作は各時代の音をバランスよく収録しているという印象です。
なかでも#9Starlight #10Going Under のヴァース部分の素朴な爽やかさは、
久々にみる、1st的な要素でうれしいです。また、#7Give Love/Get Loveは
5thの“Never Have It All”にも通じるQUEEN的なアプローチがユニークです。
また、#8 21 は3rd的なややうねりのあるダークさが垣間見えます。
RUBBER的なパワーPOPと1st的な爽やかなヴァースがミックスされた#4Realityも
いいですね。そして「Weight Of The World」の“Killing Me”で新たに提示した、
「Mood SwingsとパワーPOPのハイブリッド」タイプといえる、
#2Next Time Aroundのキャッチーさには参りました。Liveで聴きたいです。
ソロが“Climb The Gate”そのままなのは、ま、ご愛嬌…(^^;

「Higher」で新たに顕在化し、前作「overload」で顕著になった要素として、
個人的に「淡い陰り」というものがあります。3rdのダークさとも異なる、
寂寥感とでもいいましょうか、そんな要素が感じられるのが、
#3Caught Up In Your Worldです。決して静かな曲ではないのですが…。
これもかなり好きな要素です。「Higher」でいうと“The Lucky Ones”“Waited”
とかがそうです。

そして何といっても彼らの王道ともいうべきロックTuneが#1Human Nature、 
#12Tomorrow May Be Goneです。特に後者は個人的に久々のヒットです。
元気がでます。これも是非Liveで聴きたいです。

私のようなHAREM SCAREMファンにはたまらない音楽性が詰まった、
最高の作品です。ただ、気になる点があります。彼らは前進しているのか?
という問題です。

先に指摘したとおり、「Weight Of The World」以降の音は
過去の音楽の変遷にプロダクションでもって一貫性を持たせた
音楽だと思うのですが、それは言い換えれば、新しいことは何もやっていない、
ということになります。
一方で彼らは、常に「Mood Swings」との比較のなかで語られ、そこから距離の
ある音楽をやると一斉に叩かれるということもあります。
ですから、別のバンドになれ、と言っているのではありません。
(実際に以前、本当に別のバンドになりましたが)

強烈な代表作をもつバンドに共通する悩みだと思います。

しかし、彼らは本当に新しい事をなにもやっていないのかというと、そうではなく、
“Killing Me”“Next Time Around”“Waited”などは、彼ららしさを保ちつつも、
過去のどの曲とも異なる、彼らにとって新しいタイプの音だと思います。
このタイプの曲に、さらに磨きをかけつつ、“Tomorrow May Be Gone”のように
王道をおさえていけばいいのではないかと思います。要は自分達らしさを保ちつつ、
新しい事にチャレンジするのが一番だと思うのです。

そして「彼ららしさ」を最も体現しているのがLiveです。素の彼らの音にブレは
ありません。彼らの構築美あふれる音楽を、生の音でファンにぶつけること。
オーソドックスな方法ですが、Rockたるもの、やはりLiveが一番です。
そこで得られるファンとのやりとりのなかにこそ、新しいエネルギー、可能性が
眠っているのです。

前回の来日から、早4年が経ってしまいました。
今回こそは是非、来日を果たして欲しいです。それこそ、ここでも書きましたが、
AVALONメロハー祭り(^^; として3バンドくらいのカップリングにするとか…。
あの素晴らしい音楽でみんなで合唱したいです!!!

以上、「Human Nature」のレヴューに体を借りた、
「KAKEHASHI的HAREM SCAREM論」でした(^^ こんなに無駄に長い文にここまで
付き合ってくださった方、ありがとうございました(!?)。

関連記事:Mood Swings/HAREM SCAREM
              Weight Of The World Tour Liveリポート

おしまい。

↓私のHP

ことのはの、かけはし

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コメント

「KAKEHASHIさん的HAREM SCAREM論」、うんうん!と
大きくうなずきながら読ませていただきました。
>一見バラバラに見える彼らの音の変遷を、プロダクションでもって
>一貫性を持たせたのが、復活後の音だということです。

特にここの部分はなるほど~っと思いました。
KAKEHASHIさんが書かれているように彼らのような
強力な代表作を持つバンドというのはなかなか難しいところもありますが、
新しいことにも挑戦しながら王道路線もきっちり押さえる、
これが重要なことなんでしょうね。
そして、なによりも彼らにはそれができるだけの実力があるんですしね!!
そして、なんといっても彼らのライブが観たいですよね!!
AVALONメロハー祭、ぜひぜひ実現して欲しいものです。

投稿: りでぃあ | 2007年2月28日 (水) 00時03分

りでぃあさん、こんばんは。かなり独断が過ぎる内容なうえに、未整理な形で書き殴ったシロモノだと思っていたので、想いが伝わったみたいで嬉しいです。こういう試行錯誤って、強力な代表作があるバンドの宿命なのかもしれません。TNTとか、EUROPEとか…。既存のファンを満足させつつ、自分のやりたい音楽をやり、しかも新規ファンも開拓する。これは本当に難しいことですよね。でも、HAREM SCAREMならきっと大丈夫でしょう。おっしゃる通り、それだけの実力があると思います。あとはLiveですね。AVALONメロハー祭り、やってくれないかな…。

投稿: KAKEHASHI | 2007年2月28日 (水) 23時20分

お久しぶりです!

実は、聴いた事ないんですよ…。
「アヒルちゃん」のジャケの奴、結構評価
良かったので、探したけど、見つからなかったです。


投稿: Tommy | 2007年3月 2日 (金) 09時46分

Tommyさん、こんばんは。HAREM SCAREMは哀愁のメロディと構築美を求めるなら「Mood Swings」をオススメします。代表作ですしね。パワーPOP路線ならご指摘の「アヒルちゃん」ジャケ(^^ の「RUBBER」かHR要素も残っている「BIG BANG THEORY」をオススメします。前者はHR色が希薄で代わりにちょっとカントリー色が入ってます。これはこれで私は好きです。どちらにしても良いメロディが楽しめますよ。Warnerからドロップしてしまったので、アヒルちゃんを始め、Warner時代のものは廃盤になってるかもしれませんが、中古ではよく見かけますよ(^^; よろしかったら、聴いてみてくださいね! 

投稿: KAKEHASHI | 2007年3月 2日 (金) 22時43分

はじめまして。りでぃあさんのページ経由で立ち止まらせていただきました。右の最近のレビューにあるアルバム、好きなものばかりです。TERRA NOVAはあまりによいメロディなので涙が出そうになります。HAREM SCAREMからFAIRGROUNDというのもマイスペースで試聴して気に入りました。

投稿: pico | 2007年3月 7日 (水) 00時24分

picoさん、はじめまして。書き込みありがとうございます。最近のレビュー、お好きなものばかりとはうれしいです。音楽の好みがあうかたとの会話は特に楽しいです。TERRA NOVAの「Escape」には本当に感激しました。粒揃いの楽曲で埋め尽くされて、大満足です。メロディがよすぎて涙が出そうになる…私の場合、このアルバムの#9“Lonely Is The Night”がそんな曲です。バラードではないのですが、どこか切ないメロディに心を鷲掴みにされ、うれしくて天を仰いでしまうのですが、でもなぜかホロリと泣けてくるような、そんな感覚を覚えます。picoさんのおっしゃる感覚とは違うかもしれませんが…。FAIRGROUNDは確か、GのPeteのバンドですよね。聴いたことないのですが、Myspaceやってるんですね、早速試聴してみようと思います。PeteのVo、結構好きなので、楽しみです。“Happiness”とか、かなり好きです(^^

もし興味のある記事がありましたら、また遠慮なく書き込みしてくださいね。ありがとうございました!

投稿: KAKEHASHI | 2007年3月 7日 (水) 23時11分

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音楽紹介をテーマにブログをやっておりますヒロヒゲヒーローと申しますTB不愉快でしたら申し訳ないです… 削除の方お願いします。今回紹介する【Stratovarius】は 私が高校生時代にスピード感がある音楽をもとめていた事に 友人が教えてくれたバンドです。 バンド名の由来は、ギターの名器ストラトキャスターとバイオリンの名器ストラディ ヴァリウスから バイオリンの名器の名を加えてるだけあって、 一見対峙する関係にありそ�... [続きを読む]

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